「でもね、フランスには入学式ってないのよ。」 フランソワーズが不思議そうな顔をした。 「だって何をするの? 思いつかないわ。 」 「うん、退屈なものさ。軍隊みたいにズラーッと並んで気をつけの姿勢でじっとしてなきゃいけないんだから。うまい具合に花が咲いてたら、みんな桜の木の前で記念写真を撮ってたりするよ。」 「軍隊? ジャンの入隊の前にも写真を撮ったわ。そんな感じかしら。」 似ているのかな。入学。入隊。入院。いずれにしろ僕は式典なんて好きじゃない。それに今更関係ないことだから、考えるのも面倒くさい。そんなことを考えるよりは、彼女の髪飾りについた花びらの数を数える方がなんぼかまだ有意義な気がする。ほら、ここに1枚。2枚、3枚…。 フランソワーズは僕のことなんか構わずに呑気に続けた。 「おごるから撮ろうって、私が提案したのよ。通りの端に写真館があってね、前から狙ってたの。桜の花の代わりにヤシの木があったわ。勿論ニセモノ。板に描いたいかにも看板です、みたいな。…あなたの国に比べて風情がない、なんて言わないで。だって、それはジャンの思いつきなんだから。彼が私の手を引っ張ってね。この背景がいいとか何とか。その辺にあった椅子に座らされて。さっそく海外赴任でござい、なんて言うの。そんな記念写真ってないわ。てんでデタラメなの。 呑気で。そんな人なのよ。写真屋のおじさんがシャッター切ろうとするでしょ? そうすると、その度にお兄ちゃんたら、私の頭に帽子のっけるんだもの。やめてって言うのに。あげく何て言ったと思う? 記念なんだから、すこしはおめかしして撮ったほうがいいよ、ですって。失礼しちゃうわ。何枚か撮ったけど、みんなおかしな写真になっちゃった。せっかくおこづかいはたいたのに。 あの写真、どうしたかしら。」 |
のり 様 から6333 番の申告をいただきました そのココロは…「633」で12年! (ってCM覚えてらっしゃいますか? 私は覚えていました) ということでお題は 「入学式または卒業式のフランソワーズとジャンお兄ちゃん」 です。 「フランスの学校制度がどんな風なのかは知らないのですが」 とおっしゃっていた、のりさんです。 調べてみると、ご懸念の通り、フランスには入学式はありませんでした。 私としては、むしろそれが面白かったので、お題をそのままいただいたのです。 この機会に島村にノロケを聞かせてやることにしました。 のり 様 ありがとうございました!! 記録的に遅くなってごめんなさい。 |
管理人:wren